はじめに
このページでは小売店様に向けキャッシュレス決済導入の基本的な情報をご案内します。
キャッシュレス化のトレンドと小売店事業
2024年3月に経済産業省が発表した報告によると、2023年のキャッシュレス決済比率は39.3%まで上昇し、25年度までの政府目標である40%達成に向け堅調に進んでいるようです。(※1)
そのような背景の中、小売店でのキャッシュレス利用可能イメージを見てみると、他の業種と比較し「利用できる」イメージがかなり大きな比率を示しています。(※2)
つまり消費者にとって小売店での買い物はキャッシュレス決済ができて当たり前であり、対応していない店舗では大きく利便性を欠くいう時代の流れとなっています。
(※1)24年3月29日 経済産業省ニュースリリース より
(※2)2023年3月 経済産業省 消費者実態調査の分析結果 より
キャッシュレス決済の種類
現在、主なキャッシュレス決済には以下のようなものがあります。
クレジットカード:
クレジットカード決済です。これは最も利用比率の多いキャッシュレス決済方法で、消費者はクレジットカードを使って商品の購入代金を支払います。仮に今現金がなかったとしても使えるという点が大きな特徴です。
デビットカード:
クレジットカードと似ていますが、支払いは即座に消費者の銀行口座から引き落とされます。つまり銀行口座に現金がなければ使えません。わざわざATMでお金を引き出す必要がないという点では非常に便利な決済手段です。
電子マネー:
SuicaやPASMOなどの交通系電子マネー、楽天Edyやnanacoなどの流通系電子マネー、
その例外にもQUICPayやiDなど種類は豊富です。事前にチャージしておくことが前提で、消費者はカードやスマートフォンにチャージした金額を使って支払いを行います。少額決済での利用比率が多いのも特徴です。
コード決済:
QRコードやバーコードを利用した決済方法です。スマートフォンを媒介とすることが多く、店舗側のQRコードを読み込んで利用者のスマートフォンで決済するパターンと、利用者側がスマートフォンでQRコードを表示し店舗側がバーコードリーダーでスキャンして決済するパターンの2タイプがあります。
高単価決済にはクレジットカードやデビットカードが利用されることが多く、少額決済には電子マネーやコード決済が利用されることが多いようです。
小売店でのキャッシュレス決済導入のメリット
では、小売店でキャッシュレス決済を導入した場合にはどんなメリットがあるのでしょうか?
先ず第一にレジ対応の時間短縮です。
現金での決済と比較すると、キャッシュレス決済では釣銭のやり取りが発生しないことが大きな特徴です。1円単位の決済が発生することが当たり前の小売店において、釣銭のやり取りがなくなることは非常に大きな時間短縮に繋がります。これはレジ待ち時間が短縮されることで顧客メリットにも繋がります。
そして次に現金特有のリスクが軽減されます。
釣銭の渡し忘れや紛失、また盗難などの現金特有のリスクが軽減され安全で効率的な店舗運営が可能となります。これも大きなメリットの一つです。
それから顧客単価の向上です。
特にクレジットカード決済ではその傾向が顕著で、顧客は財布の中身を気にしながら買い物をしなくて良いため思い切った購入が可能となります。これは顧客単価向上に繋がり店舗の売上増に貢献します。
そして最後にインバウンド需要の取り込みです。
訪日観光客の多くはクレジットカード決済や海外QRコード決済などキャッシュレス決済を好みます。これは日本と比較し海外諸国ではキャッシュレス比率が高いということにも起因しています。年々増加するインバウンド需要を取り込むことで店舗の売り上げ増に期待が持てます。
このように小売店にとってキャッシュレス決済導入は多くのメリットが見込まれるのです。
キャッシュレス決済を利用する顧客のメリット
では利用する顧客側のメリットはどうでしょうか?
先ず、現金を持ち歩く必要がないという点です。
最近では財布すら持ち歩かない人が増えています。これは単純に荷物が減るということにとどまらず、紛失や盗難リスクが大幅に軽減されるということにも繋がります。スマホ1台であらゆる決済ができるので顧客の利便性は大きなものとなります。
次に考えられるのが決済の迅速化です。
レジで現金を取り出して小銭のやり取りをする必要がなくスピーディーな決済が実現されます。店舗によってはセルフレジを設けている場合もあり、レジ待ちせずに素早く買い物ができたりもします。キャッシュレス決済こそタイパ重視の現代において重要なツールとなっています。
そして忘れてはいけないのが、ポイントなどのお得な特典です。
多くのキャッシュレス決済は利用ごとにポイント付与やキャッシュバックなどの特典を設けていることがあります。これは現金決済では決して得ることができない大きなメリットです。ポイ活をしている人にとってはむしろ現金決済はストレスにすらなりかねません。
その他にも、利用履歴がデータで見られたり、不正利用に対するサポートがあったりと、キャッシュレス決済によって多くのメリットが消費者にはもたらされるのです。
キャッシュレス決済導入のコストと手数料
実際にキャッシュレス決済を導入する際に必要となる主なコストをご紹介します。
初期費用:
キャッシュレス決済導入時に必要となる決済端末やシステム導入費用です。これは導入する決済の種類や、契約する決済会社によって異なります。必ずしも費用が掛かるわけではなく、無料で提供している会社もあります。
月額費用:
毎月発生するシステム利用料や端末利用料などの月額固定費用です。こちらも導入する決済の種類や契約する決済会社によって料金設定が異なります。初期費用同様、無料で提供している決済会社もあります。
決済手数料:
決済利用ごとに発生する手数料です。売上金額の一定割合が手数料として引かれます。こちらも決済の種類や決済会社によって設定が異なりますが、概ね3.5%前後を目安と考えるとよろしいかと思います。
上記とは別に、キャッシュレス決済を利用する際に必要なインターネット環境の維持コストなども考慮する必要があります。また契約決済会社によってはタブレット端末などを店舗側で準備しなくてはならない場合もありますので、その場合には別途コストがかかることとなります。
キャッシュレス決済導入の手順
一般的なキャッシュレス決済導入の手順をご紹介します。
決済会社によって多少流れは異なりますが大きくは変わりません。
決済会社の選定:
はじめにキャッシュレス決済サービスを提供する決済会社を選定します。利用できる決済手段など確認し、3~5社の決済会社から情報を取り寄せましょう。コストだけでなく使える手段や月額費用などもしっかり確認し一覧化することが比較しやすくおすすめです。
加盟店契約:
次のステップとして選択した決済会社とクレジットカードや電子マネーの加盟店契約をします。通常契約前には加盟店審査というものがあります。ここで重要なのが、決済手段ごとにそれぞれ審査基準が微妙に異なり、各社に申請を上げる必要があるということです。審査期間は決済会社によって異なりますが一般的には1ヵ月程度です。
端末やシステムの導入:
決済会社から提供される端末やシステムの設置をし使用可能な環境を整えます。据え置き型端末であればレジ横などに設置するのが良いかもしれません。店舗の構造によってはポターブル型など場所を選ばずに決済できる端末やシステムが便利です。
社内研修後に利用開始:
操作方法や決済処理の手順などをスタッフに研修し利用開始となります。通常の決済実行方法はもちろんですが、金額打ち間違え時などの取消処理や決済エラーが発生した場合の対応方法もマニュアル化しておくと安心です。
利用時に不具合が発生した時などに備え、予め決済会社には不具合対応窓口の有無や対応時間などを確認しておくこともおすすめします。
決済会社選びのポイント
小売店事業の観点からキャッシュレス決済会社を選ぶ際の重要なポイントは、使える決済手段の多さです。例えばどんなカードブランドが使えるのか、どんな種類の電子マネーが使えるのかなど、多種多様な決済手段に対応している決済会社を選びましょう。
そして次に重要なポイントが決済手数料です。小売店の粗利率は決して高いものではありません。仕入小売であれば尚更です。決済手数料は決済金額の3.5%前後が目安となりますが、それは直接利益に影響を与えます。できるだけ安価な手数料率の決済会社を選択することが重要です。
最後に一つ、決済金の支払いサイクルです。
現金決済では取引と同時に手元に現金が入ってきますが、キャッシュレス決済の場合には入金までにリードタイムが発生します。これはキャッシュフローに大きな影響を与えるので、できるだけ支払いサイクルの早い決済会社を選びましょう。
その他もちろん、月額費用・初期費用なども重要なポイントではありますが、最近では無料の会社も多く存在しますので、そのような決済会社を選定候補に入れると良いかと思います。
まとめ
急にいろいろな「○○ペイ」といった多くのキャッシュレスが誕生し、一見難しそうに感じるかもしれませんが、多くの場合には端末1台で完結しとてもシンプルです。
キャッシュレス化の流れについては今さらお話しするまでもなく、小売店の皆様も感じていると思いますので是非この機会に対応をご検討ください。